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神奈川県知事 松沢 成文

活力と魅力ある神奈川の産業実現に向けて


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お話しの冒頭、TSUNAMIに関して、「青木社長、池森名誉会長には、私が知事になった時から色々な面でご指導、ご支援をいただきまして、お二人が中心になって引っ張ってきたTSUNAMIのバックアップも素晴らしい形になってきているのではないかと感じました。」というお言葉をいただきました。

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「神奈川力」で日本を動かす

神奈川には、神奈川独自の魅力や特色があります。私は、これを「神奈川力」と呼んでいます。

1. 歴史、伝統、文化の神奈川

神奈川の特色の第一は、歴史、伝統、文化です。横浜は来年開港150周年を迎えますが、神奈川は横浜開校以来、日本の近代化をリードしてきました。鎌倉時代には幕府が置かれ政治の中心地でした。鎌倉は日本の中世の歴史を作ってきましたし、海にも近く緑も多いので文化人もたくさん住んでおられて、日本の文化の一つの中心地と言えると思います。神奈川は観光地が多いのですが、三大観光地というのが横浜、鎌倉、箱根です。箱根は年間2000万人位の観光客を訪れます。これは首都圏の中でも特筆すべきことです。このように、神奈川には歴史・伝統・文化に裏打ちされた多くの地域資源があります。

2. 産業力、技術力の神奈川

第二は、産業力、技術力です。明治以降、横浜、川崎を中心に日本の新しい産業が生まれました。浅野総一郎さんが富山から出てきて、多数の企業を創設しましたが、日本のベンチャービジネスのはしりだったかもしれません。京浜臨海部の埋め立てをやって、浅野財閥と言われるようにさまざまな産業を振興しました。その裏には、安田善次郎、渋沢栄一という素晴らしい金融家がついていました。ある意味、ベンチャーキャピタルがあったわけです。資金面でバックアップして、事業を支えて大きくしました。戦後、日本の高度経済成長を引っ張ってきたのは、神奈川の京浜臨海部の重厚長大産業と、それを支える内陸部の技術力ある中小企業と言っても過言ではありません。今、県では「インベスト神奈川」や「神奈川R&Dネットワーク構想」といった地域経済の活性化策を展開していますが、神奈川の研究開発機能の集積は全国トップクラスです。

3. 大都市の活力と多様な自然環境を併せ持つ神奈川

第三に、神奈川は小さな県ですが、三浦半島や真鶴半島の海岸、湘南の渚の恵み、丹沢、足柄の山々、火山もあれば温泉もあります。こうした自然環境の多様さとともに都市の多様性も神奈川の魅力です。国際港湾都市の横浜、かつては工業都市と言われた川崎は今はハイテク産業の集積地です。富士通、日本電気、東芝の研究開発機能は川崎に本拠地を置いています。あるいは、城下町・小田原もあります。色々な多様性のある都市があります。


県知事としての私の仕事は神奈川の魅力や特色をもっともっと引き出して、神奈川を住みやすい街、活力のある地域にすることであると考えています。

神奈川力の二つの要素−「先進力」と「協働力」

そして、こうした神奈川の魅力や特色をさらに充実、発展させる潜在的な二つの要素があります。それが「先進力」と「協働力」です。私は、「神奈川力=先進力+協働力」と考えています。

神奈川県はさまざまな分野で先進性を発揮してきましたし、これからも可能性があると思います。行政の面でも神奈川から他の自治体に広がり、最後には国を動かしたという事例がいくつかあります。例えば、情報公開については約25年前に、都道府県で初めて条例を作りました。当時の長洲知事は、原則公開でいこうという当時にしては画期的な理念で、1982年に神奈川県で公文書公開条例を作ったのです。それが全国の自治体に広がり、国が情報公開法を制定したのが1999年で、神奈川に遅れること17年です。環境アセスメント条例も神奈川が先進的に取り組み、今や法律もできています。私が知事に就任してからは、県知事の多選禁止条例というのを全国で初めて作りました。そういう政治改革の面でも、神奈川から全国に広がっていくというのが多いのです。これが神奈川の「先進力」です。

もう一つ重要なのは「協働力」です。みんなで議論して方向を決めたら、官も民も協力して、「協働力」で新しい価値を創造していく。これも神奈川の力です。県民、企業、ボランティア団体、NPO、こういう民間のセクターと県が協力する体制を作って、新しい街づくりをやっていけるのも神奈川の強みです。例えば、公共事業だけれども民間と連携をしてやっていくPFIというのを神奈川では何年も前からやっており、大学や美術館もPFIで作りました。民間の資金参加です。今後も、県立がんセンターをPFIで再整備していきます。また、NPO団体の方とは、さまざまな事業の政策立案、政策実施、政策評価について協働して取り組んでいます。 私の基本ポリシーは、民間の皆さんと連携して新しい公的サービスを創造していきましょうという発想です。税金をもらって役所の専売特許としてやるというのではなくて、民間の皆さんに一緒になって考えていただいて、一緒に事業に参加してもらって、新しい街づくり、公的サービスを創造していく。そうやって新しい時代の公共サービスを作っていこうということを県政運営のポリシーの一つにしています。

この「先進力」と「協働力」で神奈川力を充実、発展させていこうというのが、神奈川県のポリシーであるということをまず皆さんにご紹介させていただきたいと思います。

インベスト神奈川

5年前、私が知事になった時、神奈川はバブル崩壊後の不況からまだ立ち直れない状況でした。日本の製造業がコストが安い効率的な生産基地を求めて中国などの東南アジアへ、国内の場合であれば東北地方や九州にも出て行ってしまっていました。神奈川は、「技術力」、「研究開発の力」で生きてきたのですから、製造業がどんどん出て行ったら神奈川の産業は活性化していきません。私が、まず最初に取り組んだのが産業政策で、日本一の産業政策を作ろうと考えました。魅力的なインセンティブによって企業を積極的に誘致しようとして、平成16年に作ったのが「インベスト神奈川」という産業政策なのです。神奈川県内の企業のみならず、他県や海外の企業も神奈川に来てもらえるようにしようということで全国トップクラスの優遇策を作りました。

例えば研究所など研究開発施設を作る場合には、80億円を限度に、投資額の15%を県が助成します。工場を作る場合は、投資額の10%を県が助成し、限度額は50億円です。税の面でも新しい土地、不動産を買って投資をする場合は、不動産取得税は4分の1だけでいい。また、中小企業には、法人事業税も5年間2分の1に軽減しますし、「インベスト神奈川」の特別融資ということで低い利率の融資のプログラムも作りました。

企業を誘致するためにはインフラの整備も重要です。現在、さがみ縦貫道路の整備を進めていますが、インターの近くに市町村と相談して、企業を誘致できる産業用地を造っていきたいと思います。こうした基盤整備もインベスト神奈川のプログラムの一つなのです。

このほか、県庁に企業誘致室という企業誘致専門のセクションを作り、ワンストップで企業の県内投資をサポートしています。

こういう一連のプログラムがインベスト神奈川です。 そして、神奈川の優位性を最大限に活かすのは、研究開発機能の誘致なのです。神奈川は研究機関の数は東京に次いで全国第二位なのですが、研究機関で働くエンジニアや研究員の数は第一位なのです。そこに研究開発機能をもっともっと呼び寄せ、研究開発は神奈川が一番いいぞ、というブランドができれば集積が集積を生んでいくわけです。

これまで「インベスト神奈川」で、大企業、中小企業合わせて120社の新しい投資を実現してきました。この投資総額は5600億円であります。浜銀総研の試算では、この投資による経済波及効果は、10年で16兆円規模になっていくだろうということです。もう一つ大事なのは、地域経済に波及効果が生ずるとそれが税収で戻ってくるのです。「インベスト神奈川」では、企業に対し約700億円の助成金を支出することとしていますが、企業の投資と操業によって15年間で県税と市町村税合わせて3000億円の増収となる見込みです。こういう試算のもとで、私達は「インベスト神奈川」を動かしているのです。どんな地域でも産業を活性化させるというのが自治体経営の基本です。企業からの税収が上がってくれば、教育、福祉、街づくりなど色々な事業が展開でき、県民全体がハッピーになっていくわけです。産業を活性化させて地域を潤うようにして、税収を上げて、教育も福祉もさまざまな政策を展開していく。「インベスト神奈川」でこれをやっていきたいのです。

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トップセールスで企業誘致

「インベスト神奈川」によって武田薬品にも神奈川県への投資を決定していただきました。武田薬品は大阪で生まれて大阪で大きくなって、今、日本ではナンバー1の製薬会社です。武田薬品が研究開発機能を集約して新しい研究所を作りたいという情報を得ましたので、トップセールスを始めまして、私も武田の大阪の本社に行きました。ライバルはどこかというと、本拠地大阪府なのです。大阪府にしてみれば、大阪生まれで大阪育ちの武田薬品の中枢の研究施設が神奈川に持って行かれるというのは大変なことです。

その時、武田が神奈川県に要求してきたのは、一つは人材確保です。首都圏には、工科系の大学があり、バイオを研究している研究員が豊富にいます。また、研究所で働く研究員は、大体その近くに住みますが、そこで重要なのが福祉や教育の環境なのです。武田に神奈川県や東京南部にある私学のリスト全部持って行きました。子弟の教育にはもってこいの地域ですと。そういうことも含めて企業というのは投資先を決めるのです。もちろん、グローバルな営業の展開というのもありますが、従業員が住む環境、あるいはその子弟の教育までも含めて決めるのです。そういう意味で、この研究所誘致はさまざまなメリットがあると思います。

また、日産の本社の移転と研究所の集約が実現できたのは、中田横浜市長とも協力をしてカルロス・ゴーンさんに直談判した結果なのです。こういうトップセールスをやりながら、神奈川にとにかく新しい投資をということでやっています。

富士フイルムは「インベスト神奈川」の助成適用の第一号です。足柄の地で生まれ、今や世界企業です。富士フイルムもバイオ、医薬品、化粧品など色々な分野に参入していくには、やはり基礎研究が必要だということで、新しい研究施設を作りたいという情報を得ました。そこで、社長にお会いして、神奈川で生まれて大きくなった企業なので、研究施設は作るのであれば足柄に作って欲しいと直談判をやったのです。富士フイルムも県がそこまで覚悟を決めて支援をしてくれるのであれば、神奈川でやりましょうと言うことで、今、素晴らしい研究所が動き始めています。

それから、味の素も、神奈川生まれ、神奈川育ちの企業です。味の素は、葉山で生まれ、大きくなり、川崎に大工場を作りました。そして、世界の味の素になっていったのです。今までの京浜工業地帯は、重厚長大産業の中心地でしたが、羽田空港が再拡張・国際化され、神奈川口ができると今後は臨空産業の地域として生まれ変わると思います。そういう状況もあり、味の素は研究所を神奈川に決めました。

そのほかにも、ソニー、キャノン、富士ゼロックス、横河電機など、世界に冠たる企業の研究施設が今どんどん神奈川に来ているのです。神奈川は、羽田が近い、横浜港、川崎港もある、東名、新幹線で太平洋ベルト地帯のどこにもつながっている、という地の利がありますから、そうした地の利も活かし、「インベスト神奈川」によって、神奈川のデメリットである土地の高さなどを解消して、研究開発機能は神奈川に、と言われるような地域にしていきたいと思います。

電気自動車を神奈川から日本全国、そして世界へ

今、神奈川県では、「インベスト神奈川」による企業の集積を生かし、「神奈川R&Dネットワーク構想」を展開しています。研究開発施設と技術力のある中小企業、理科系の大学、公的研究機関、こうした産学公が連携して、共同研究や共同の技術開発、技術移転などを進め、産業集積の成果を点から面へと波及させているのです。

一つ具体的な例を出しますと、神奈川で産学公連携で新しい試みをやっているのが、電気自動車です。神奈川には日産、いすゞ、三菱といった自動車会社があり、研究開発機能を置いています。それから、電気自動車に絶対必要なリチウムイオン電池を開発している電池会社が3社もあるのです。NECラミリオンエナジー、松下電池工業、GSユアサコーポレーション。神奈川には電気自動車を研究している大学の研究室もあります。慶應義塾大学の電気自動車研究室は、ELiicaというスーパーカーのような電気自動車を開発しています。神奈川工科大学には、日本で唯一、自動車システム開発工学科という「自動車」という冠がついた学科があります。また、東京電力の技術開発研究所が鶴見にあり、電気自動車の普及に向けた急速充電器の開発をやっています。このように、自動車会社、電池会社、大学の研究機能、電力会社が全部神奈川に揃っているのです。神奈川県がこれらをコーディネートして、産学公連携の協議会を作って、電気自動車を普及させていく。そういうモデルを神奈川で作り、全国に広げていきたいと考えています。

なぜなら、今、地球温暖化が大きな問題だからです。CO2の排出量は産業部門が一番多いのですが、運輸部門のほとんどは自動車の排ガスが原因です。これから中国とインドが発展していきます。中国、インドで自動車を持っているのは、一部のお金持ちの人だけですが、これが中産階級まで車に乗り、全部ガソリン車だったら、中国やインドの自動車から出る排気ガスは、ものすごい量になってしまいます。だから、中国やインドで自動車が一般に普及する前に、大きな技術のブレイクスルーによって、CO2の排出が少ない電気自動車なり、燃料電池車に抜本的に代えないと、CO2削減による地球温暖化対策は絵に描いた餅になってしまします。

神奈川県が考えている電気自動車普及プランの1つが購入時の補助金です。100万円のガソリン車と300万円の電気自動車の差額の半分は国から補助金が出るのですが、国の補助金の半額を神奈川県で上乗せして補助しようというものです。そうすると100万円と300万円が、100万円と140-150万円位の差になるのです。2つめが税金の軽減で、自動車税と自動車取得税の90%を減額します。それから走行時の優遇策として、神奈川県内の公営駐車場のうち、まず県営の駐車場については電気自動車の場合は半額にします。また、電気自動車に乗って、神奈川県内の高速道路でETCを使った場合は、高速道路料金を半分にしたいと思います。走行時にも電気自動車を乗っていると、すごく有利となる。しかも、燃料代はガソリン代の6分の1ですから。こうやってインセンティブをつけて有利性を高めていけば、電気自動車を買いたいという人が増えていくと思います。そうすると自動車メーカーは量産ができるようになってコストを落とすことができます。コストがガソリン車と同じ位になったら、今度は環境配慮という視点から電気自動車の方が有利になるのです。

電気自動車の普及のためには社会基盤の整備も必要です。神奈川県のプランでは、急速充電器をまずは県内に30基整備します。それから100V、200Vの充電器についても、少し時間がかかりますが、これを公営駐車場や百貨店の駐車場にも置いていただいて、充電器が街の中にあるようになれば普及が進んでいくと思います。神奈川の電気自動車普及のモデルが成功すれば全国に広がっていきますし、普及が進めばコストがどんどん下がって市場で勝負できます。日本でこのモデルが成功すれば、さらに世界へと広がっていくことでしょう。

こうやって産学公の連携と協働によって、日本をリードできるような新しい産業を神奈川から創って、産業社会を変えていこうというのが神奈川県の大きな目標でございます。

「破天荒力」に学び、日本をリードしていく

最後に、今日、皆さんの所に「破天荒力」という本をご紹介させていただいておりますが、「破天荒」ということばは、けた外れ、並はずれなことをやるという意味です。そういう力が世の中を変えていくんだというコンセプトで書いた本なのです。

私は昔から箱根が大好きですが、箱根の歴史は一つは二宮尊徳から始まりました。二宮尊徳の一番の理念というのは、経済道徳論なのです。実業がなくて金儲けだけを狙って金持ちになることがすごいのだという経済は絶対に破綻する。社会に貢献する実業を持って、その上でしっかりと経済をしなさいということなのです。福住正兄という二宮尊徳の愛弟子が、箱根の福住旅館の婿に入って、福住旅館の経営を建て直し、箱根湯本を活性化させたのです。

もう一つは福沢諭吉なのです。福沢諭吉は、明治以降諸外国から来た人達がくつろげる国際観光が必要と考え、慶応義塾の弟子の山口仙之助に、「箱根で国際観光の拠点となる事業を興せ」という指令を与え、山口が富士屋ホテルを開いたのです。福沢も何度も通っています。福沢は福住正兄と非常に仲良かったのです。恐らく、福住と山口を紹介したのは、福沢諭吉なのですが、この二人が本当に素晴らしいベンチャー起業家なのです。

横浜が開港し、日本の近代化がスタートした当時、山奥のリゾート地だった箱根が、この二人のベンチャー精神によって、どんどん開発されたのです。当時は今のような行政の支援がないですから、事業をやる時に行政からどれだけ補助が出るとか、どこまでサポートしてくれるかというのは、全く考えません。自分達のため、自分達の地域のためであるから、自分達で資金を出し、人を集め、自分達で事業をやって行こうと、まさしくベンチャービジネスのはしりなのです。そういうことを、色々勉強させていただいたので、一冊の本にしたためさせていただきました。ぜひとも読んでいただきたいのですが、これがある映画監督の目に留まりまして、映画にもなりました。

この箱根のプロジェクトを見ても、当時から神奈川には「先進力」と「協働力」があるのです。これが、箱根を切り開いて日本一のリゾート観光地にしているのです。現在を生きる私達も先達に学んで、「先進力」と「協働力」をもってこの神奈川から新しい発信、新しい事業を興して、日本をリードして変えていく、そういう役割を果たしていきたいと思っております。そのためには、民間の皆さんが活力を持って、どんどん挑戦していただかなければいけないので、県としては、そういう環境整備を精一杯サポートさせていただきたいと思っております。TSUNAMIの皆さんには、その先頭を走って、ベンチャー支援、ベンチャー育成をやっていただいているわけで、また世話人代表の青木社長をはじめ、皆様のリーダーシップで素晴らしい活動が展開されますことを、ご祈念致しまして、私のお話とさせていただきます。

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神奈川の魅力と活性化について、貴重なお話を大変力強く語っていただきました。最後はTSUNAMIの活動への応援のお言葉もいただきました。

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