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寺島 実郎 氏「2006年の世界潮流と日本産業」

財団法人 日本総合研究所 会長、株式会社 三井物産戦略研究所 所長 、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 教授
・・・早稲田大学大学院政治学研究科修士課程終了。三井物産株式会社調査部・業務部を経て、ブルッキングス研究所に出向。米国三井物産ワシントン事務所長、三井物産業務部総合情報室長を歴任。1999年、株式会社三井物産戦略研究所所長に就任。2001年 財団法人日本総合研究所理事長、2002年 早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授、2003年 三井物産株式会社執行役員を兼任。最新刊の「脳力のレッスン-正気の時代のために」(岩波書店)を始め、著書多数

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1年前のアントレプレナーズ倶楽部発起会において、「2005年の世界潮流と企業戦略」というご講演をいただきましたが、今回も、年頭にあたって今後の世界・日本経済の方向性についてお話しいただきました。

「ベンチャーとして現場で戦っている方にとっては、毎日ミクロの話に直面していて、ミクロが重要だという確信をお持ちだと思いますが、マクロとセミマクロとミクロは相関しており、大きな潮流の中でミクロが生まれているということを確認しながら進むということも必要と考え、思いっきりマクロの話から、セミマクロ、ミクロへの話に展開できるようにと思います。激流の中で、自分がどこに立っているのかという相対感覚を持つことは、ものすごく難しいことで、相対感覚を保つためには、歴史の中にどの位置に立っているのか、世界を見渡して我々がどういうところにいるのか、絶えず、座標軸の中で考えていかないと、激流に飲み込まれてしまうと見えなくなります。」との主旨で、歴史観と世界観を検討する視点をご提供いただきました。

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高成長の世界経済

2005年の世界経済は思いもよらないほど良かったということです。今後も右肩上がりの持続的成長経済と言うのが見えてきます。世界は人類の歴史始まって以来の高成長の同時化と言うサイクルの中を走っています。世界全体をみわたしてもマイナス成長ゾーンがないという異様なことが起こっています。世界中、おしなべて成長軌道の中にいるという異様なことになっているのです。そして、世界のビジネスマンの空気というと、一生のうちに一度あるかないかの大金持ちになるチャンスだということで、首を傾げたくなるような、異様な熱気の世界を走り抜けています。それでは、なぜ高成長が同時化して、しかも持続するのか、というと、以下のことが背景にあります。

・グローバル化とIT革命
・世界人口の持続的拡大
・無視できない戦争経済の要素
・世界的低金利

問われる3つのE

経済のE,環境のE,エネルギーのE、3つのEのバランスがとれなければ、持続可能な成長は不可能であるという建前論がありますが、3つのEが歪み始めているような状況にあります。環境負荷の増大ということが、大変大きな課題になっていることは間違いない。もう一つは、エネルギー価格高騰。日本の場合は、長期的な為替の円高へのシフトの中で吸収されてきました。さらに、2度の石油危機を経て、日本の産業は省エネルギー技術と環境保全技術の蓄積が大変なレベルに到達してきました。日本のエネルギー利用効率はアメリカの2倍、中国の9倍になっています。逆に、エネルギーの利用効率の悪い地域はエネルギー価格の高騰がボディブローのように効いており、エネルギー価格の高騰は今年の世界経済および日本の経済について最大のリスクファクターです。

なぜエネルギー価格が高くなっているかといいますと、需要側の要素としてBRIC'sの需要拡大、中東の地政学的不安という供給側の要素という理由を専門家はあげますが、実は、十分過ぎるほどの供給力があります。今や、ロシアがダントツのエネルギー化石燃料国になっていまする。北海原油も我々が思っている以上に出ています。冷戦が終わってから、石油価格を決めるメカニズムが変質し始め、投機的な要素の顕在化というのがエネルギー価格を左右する要素となりました。

WTI(West Texas Intermediate)がニューヨーク商品先物市場に上場されて、IT革命のパラドックスでもありますが、オンライントレードにより短期資金が物凄い勢いでコンピューターの中を駆け巡って、デリバティブという大きな市場が広がりました。石油価格は、需要曲線と供給曲線で価格が決まるのではなくて、マネーゲームの対象として投機的な資金が市場に流れこむことによって、乱高下するようになりまし。WTIはニューヨーク先物市場で、1日に2.5〜3億バレルの取引がなされていますが、WTIの実需、つまりヒューストン地域での石油の需要は70万バレルで、世界の石油供給国を全部かき集めても、8500万バレルにしかならないという事実がそれを物語っています。

世界は高成長を維持しており、それが石油需要を押し上げています。また、投機的な要素が剥げ落ちても供給余力は限界にきているため、この高価格水準は結構続くという見方が、この分野に関する様々な形で関わっている人達の見方です。

 

 

産業内2極分化と川上インフレ・川下デフレ

日本経済は内需主導型の景気回復パターンなってきているという議論が盛んに報道され始めていますが、大企業リストラ要素と中国依存要素の2つの要素が、2%台の成長軌道に戻ってきている基本的な理由です。

今の日本の産業の状況が非常に難しいのは、産業別の一般論が成り立たないことです。例えば、自動車業界は好調ですという括りができません。トヨタのように最終利益で兆円単位の利益を出しているところもあれば、存続をかけて戦うというところに追い込まれている自動車企業もあります。一般化できないというところが、産業内2極分化という意味。殆どの産業が経営力格差であり、2極に分化していっています。これに伴い、業界団体は終っており、産業別労働組合も終わり。

もっとすごいのは、川上インフレ、川下デフレであり、自分が背負っている業界によって景況感が違っているという時代に生きているわけです。また、この間まで産業アナリストとかエコノミストが言っていた話がひっくり返っており、これからの有望産業はIT、バイオ、ナノ高付加価値先端技術とぶちあけていたが、実態は素材型企業の復権ということが起こっているのです。正確に整理すると、素材型企業で中国向けのビジネスモデルに依存している企業ほど業績がいいという奇妙なねじれが起こっています。

失われた10年での社会構造の変化

分配の格差の拡大が進行し、都市中間層の生活の劣化が起こり、消費ができなくなっていますが、これについても中国依存要素という面があります。

貿易構造の変化と日本の国際関係上の立ち位置

日本の貿易の相手先は輸出も輸入もアメリカがNO1というのが、この半世紀以上続いてきた常識でしたが、これが大きく変わりました。日本の貿易総額に占めるアメリカの比重が、昨年17.9%までに下がり、一方でグレーターチャイナが30%近くにきており、アジア全体で50%に迫っています。これからあぶりだされる国際関係上の立ち位置を一言で言うと、日本は今、頭と体がバラバラな状況になっているということです。体は産業という文脈に置いて、アジアとの関係で生きて行かざるをえない。にも関わらず、意識の中にアメリカとの関係を9割引きずっています。アメリカとの関係は今後も大事ですが、混濁したまま未整理。アメリカとの関係大事にしながらアジアとどういう相関関係作っていったらいいのか、戦略性や構想力など、まだわからない状況にあります。

アジアシフトに伴う物流の変化、そして、日本はアジアとどう向き合うか

貿易構造の変化を背景に、アシフトに伴う物流の変化が起こっています。日本海物流が太くなり、太平洋側の港湾の地位が一気に空洞化してきています。アジアのダイナミズムが日本の国土軸さえ変え始めました。そういう流れの中で、アジアとどう向き合って行くのかという課題、東アジアとの連携というのが日本の大変大きな課題になってきています。本当はもうここから波及していく日本の産業の話と多々あるが、また機会を求めて話したいと思います。

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文字通り、マクロからミクロへ、ミクロからマクロへ、ホリエモンからソロスへ、リバプールから釜山トランシップへ、縦横無尽な議論の展開で非常に刺激的なお話でした。これを受けて、活発な質問が提起されました。

質疑応答の中から、「戦後のパラダイムは全部壊れ、経営者にはより戦略性が求められる」、「IT革命が世界をどう変えたかということも重要。ITによる労働の平準化がニート・フリーター減少の背景になっており、若い人を起業に向かわせるプラットフォームを整備する必要がある。」、「人口構造の急速な成熟化(人口減少と高齢化)を衰亡にしない知恵として、移民かロボットかという選択肢がある。ロボットに関して技術のキーワードはセンサー。技術を注入して少子高齢化社会を迎え打って、その技術をテコにまた世界に新しい産業のパラダイムを開く。」など、示唆に富むご回答をいただきました。

 

 

 

 

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